ウォールウォッシャーの照明技術：洗浄照明、グラジング、統合照明の使い方

壁面照明に関しては、存在する照明方法の数や、効果を最大限に引き出すための器具の配置方法ではなく、そもそもなぜ壁を照らすのかという点が最も重要な問いです。

視覚的な観点から見ると、人々は主に目の高さの範囲で室内空間を認識します。つまり垂直面は私たちの視界に入りやすい位置にあるということです。インテリアデザインにおいて、垂直面に施される多くの仕上げ材や布製装飾品は、適切に強調するために専用の壁面照明が必要とされます。研究によると、日常の活動や情報取得の約80％がこの水平方向の視野内で行われています。

目の高さでの視覚と垂直面の照明のこの強い関連性により、垂直照明は視覚的快適性にとって極めて重要な要素となります。人間の目は自然と水平視線から上下約20度の範囲に焦点を合わせます。

この記事では、広く使用されている3つの壁面照明技術について詳しく説明し、その応用方法と最適な実装方法を探ります。

1. 壁洗浄（ウォールウォッシング）：均一な照明の実現

その名前が示すように、壁洗浄（ウォールウォッシング）とは、水のように対象の壁を光で「洗う」ことで、清潔で一様な見た目を創り出すことです。

目的は、壁面を均一に照らすことであり、繰り返しになりますが、均一に、均一に、均一に照らすことです！この技法は、比較的滑らかな壁面や、強い影を作らずに均等に照らす必要があるアート作品を設置した壁に最適です（ただし、効果を出すために意図的に影を使う場合もあります。これについては後述します）。

代表的なケーススタディ：

シーグラム・ビルディング（ニューヨーク）：壁洗浄の「始祖」とも言える存在であり、照明デザイナーのケリーとジョンソンによって開拓された概念です。

田中ビジネススクール（ロンドン）：受付カウンター自体は明るく照らされていません。代わりに、照らされた壁面が視線を引きつけています。

171 Collins Street（メルボルン）：エントランスエリアでは、明るく照らされた二次元の壁を使用して建築空間を明確に定義し、廊下をより広く見せています。

大英博物館（ロンドン）：均一に「ウォッシュされた」壁と対照的な、意図的に暗くされた床部分に注目してください。

アート強調照明：壁面アートを効果的に照らし、壁からの反射光によって部屋全体を明るく開放的に感じさせます。

実施

ウォールウォッシングは、垂直面を特定の均一な輝度レベルまで明るくすることを目的としています。通常、広いビーム角を持つ照明器具を使用し、調整可能な方向性ライトまたは固定式の非対称ウォールウォッシング器具が用いられます。設置における重要なガイドラインとして「黄金比」1:3があり、照明器具は通常、照らす壁の高さの1/5から1/3の距離だけ壁から離して設置します。直線状の照明器具も、隙間のないウォッシング効果を得るために非常に適しています。

2. ウォールグラジング：テクスチャとドラマを強調

ウォールグレージングはウォールウォッシングから発展した技法です。主な違いは、グレージングでは意図的に表面の質感を強調することです。テクスチャのある面に光を掠めるように照射することで、明確な影とハイライトが生まれ、豊かで劇的な効果を生み出します。

この技法は、3Dタイル、生コンクリート、凹凸のあるレンガ積み、木製スクリーンなど、均一な照明では陰影が消えてしまい、素材の特徴や表現効果が失われるような、質感が強い表面に最適です。

事例:

3Dタイル（イタリア）：影と立体感を保つためにグレージングが必要です。

サンジャクラルモスク（イスタンブール）：コンクリート壁に奥行きとドラマチックな表情が加わっています。

ブルーフィンレストラン（ニューヨーク）：テクスチャのあるレンガ壁が、光と影のダイナミックな演出を生み出しています。

木製スクリーン：グレージングによりスクリーン自体の構造が強調され、二次的な光のパターンが隣接する壁に波打った効果を生み出しています。

実施

ウォールグレージングは、光源を表面に非常に近い位置に配置し、狭いビームで壁を「なでる」ように照らします。狭いビーム角を持つ照明器具を使用し、通常は距離が近いダウンライトや直線状の照明器具を設置します。推奨される設置距離はウォールウォッシングよりもずっと短く、一般的には壁の高さに対する距離の比率が1:5未満です。埋め込み型の直線照明器具や、狭いビームの調整可能なスポットライトの両方が適しています。

3. 統合照明：自己発光のような錯覚

LED技術の進歩により照明器具の小型化が可能となり、統合照明が実現しました。この方法では、壁を外側から照らすのではなく、照明器具を壁構造体内部に隠すことができます。これにより建築家やデザイナーは非常に大きな自由度を得られます。

壁に透明・半透明・穿孔素材を使用し、その内部に光源を隠すことで、壁自体が内側から発光しているかのように見え、強い趣味性（遊び心／興味深い効果）を生み出します。

事例:

プエルタ・アメリカホテル（マドリード）：ガラス壁内に隠されたライトチューブが、上部と下部から光を発している。

ラカブダールレストラン（ムンバイ）：発光する壁が空間全体のベースとなる間接照明を提供している。

革新的な応用：バスタブさえもこの原理を利用して印象的な効果を生み出すことができる。

視覚的快適性の最適化

垂直照明の代表的な例はアートミュージアム・ベルン（スイス）であり、天井からの強い水平照明を使わずに、垂直方向の照明のみで来館者を自然に誘導し、作品を明瞭に鑑賞でき、顔や空間のディテールもはっきりと認識できるようにしている。この手法は欧州の美術館で広く採用されている。

まとめ

なぜ壁を照らすのかという目的を理解することが第一歩である。均一性を重視するウォールウォッシング、質感を強調するウォールグレージング、革新性を追求するインテグレーテッド照明など、適切な技術を選ぶことで、建築およびインテリアデザインにおいて機能的な視覚的快適性と劇的な美的効果の両方を実現できる。